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交通事故による股関節脱臼の後遺症とは?痛み・可動域制限と後遺障害等級を解説


 交通事故で股関節を脱臼すると、治療によって元の位置に戻しても、股関節の痛みや動かしにくさなどの症状が残ることがあります。

 また、股関節脱臼は、大腿骨頭壊死や坐骨神経損傷などの合併症が生じることもあります。

 股関節脱臼によって症状が残った場合、股関節の可動域制限の程度や痛み・しびれなどの症状に応じて、後遺障害等級が認定される可能性があります。

 この記事では、交通事故による股関節脱臼について、残りやすい症状と後遺障害等級、後遺障害認定で重要になるポイントを解説します。

 股関節は、骨盤にある寛骨臼というくぼみに、太ももの骨である大腿骨の先端(大腿骨頭)がはまり込むことで形成されています。

 股関節脱臼は、大腿骨頭が寛骨臼から外れてしまうケガです。股関節は強い靱帯や筋肉に囲まれた安定性の高い関節ですが、交通事故などによって大きな力が加わると、脱臼することがあります。

交通事故では後方脱臼が多い

 股関節脱臼は、大腿骨頭が外れる方向によって、主に前方脱臼と後方脱臼に分類されます。交通事故では、後方脱臼が多くみられます。

 後方脱臼は、股関節と膝を曲げた状態で膝に強い衝撃が加わり、大腿骨頭が後方に押し出されることで生じます。典型的なのが、自動車の衝突事故で、膝がダッシュボードに衝突する「ダッシュボード損傷」です。

 また、股関節脱臼では、大腿骨頭や寛骨臼の骨折を伴うこともあります。骨折を伴う場合は「股関節脱臼骨折」と呼ばれます。

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股関節脱臼骨折については、以下の記事参照

交通事故による股関節脱臼骨折で痛み・可動域制限が残ったら?後遺障害は何級になる?

交通事故による股関節脱臼骨折では、股関節の痛みや可動域制限、歩行障害などが残ることがあります。後遺障害は8級・10級・12級・14級などに該当する可能性があります。残りやすい症状、後遺障害等級、認定のポイントを解説します。

股関節脱臼の治療

 股関節脱臼の治療では、できるだけ早く脱臼した関節を元の位置に戻す「整復」が重要です。通常は、鎮静や麻酔を行い、手術をせずに関節を元の位置に戻す徒手整復を試みます。

 骨折を伴う場合や徒手整復が困難な場合などには、手術が必要になることもあります。

 整復後は、画像検査などによって関節の状態を確認し、損傷の程度に応じてリハビリテーションを行います。なお、脱臼が元の位置に戻っても、股関節の機能が完全に回復するとは限りません。

 股関節脱臼は、整復後も股関節の痛みや可動域制限などが残る場合があります。また、大腿骨頭壊死や坐骨神経損傷などの合併症にも注意が必要です。

股関節の痛み

 股関節脱臼によって関節軟骨や周囲の軟部組織が損傷すると、治療後も痛みが残ることがあります。

 主な症状は、以下のようなものがあります。

  • 歩くと股関節が痛む
  • 長時間立っていると股関節が痛くなる
  • 階段の上り下りで痛みが生じる
  • 股関節を動かすと痛みが出る

股関節の可動域制限

 股関節脱臼によって関節軟骨や周囲の組織が損傷すると、股関節の可動域が制限されることがあります。

 主な症状は、以下のようなものがあります。

  • 股関節を十分に曲げられない
  • 足を横に開きにくい
  • 靴下を履く動作が難しい
  • しゃがむ動作がしにくい
  • 椅子から立ち上がる際に股関節が動かしにくい

足のしびれ・筋力低下

 股関節脱臼では、股関節の近くを通る坐骨神経が損傷することがあります。坐骨神経が損傷すると、以下のような症状が生じる場合があります。

  • 太ももの後ろから足にかけてのしびれ
  • 足の感覚が鈍くなる
  • 足首や足の指を動かしにくくなる
  • 足の筋力が低下する

大腿骨頭壊死・変形性股関節症

 股関節脱臼では、整復後の合併症にも注意が必要です。特に重要なのが、大腿骨頭壊死です。

 大腿骨頭壊死とは、大腿骨頭への血液供給が障害されることで、骨の組織が壊死してしまう状態です。

 股関節脱臼によって大腿骨頭に血液を供給する血管が損傷すると、整復後しばらく経過してから大腿骨頭壊死が生じることがあります。

 また、脱臼時に関節軟骨などが損傷すると、その後、変形性股関節症が生じる場合もあります。

 大腿骨頭壊死や変形性股関節症が進行すると、股関節の痛みや可動域制限が生じることがあり、重症の場合には人工股関節置換術が必要になることもあります。

 そのため、股関節脱臼では、整復後も医師の指示に従って経過観察を続けることが重要です。

 股関節脱臼によって後遺症が残った場合、股関節の可動域制限や痛み・しびれなどの症状に応じて、後遺障害等級が認定される可能性があります。

後遺障害の内容後遺障害等級
股関節の可動域制限8級7号、10級11号又は12級7号
股関節の痛み・しびれ12級13号又は14級9号

股関節の可動域制限:8級7号・10級11号・12級7号

 股関節の動きが制限されている場合には、関節の機能障害として後遺障害が認定される可能性があります。

 股関節の可動域制限については、原則として、屈曲・伸展と外転・内転の2つの主要運動を評価します。屈曲と伸展、外転と内転は、それぞれの角度を合計して、健側の可動域と比較します。

股関節の可動域制限が制限された場合に想定される後遺障害

股関節がほぼ動かない→関節の用廃:8級7号

健側の2分の1以下に制限→関節の機能に著しい障害:10級11号

健側の4分の3以下に制限→関節の機能に障害:12級7号

 関節が強直するなど、関節の用を廃したと評価される場合、8級7号が認定される可能性があります。

 関節の可動域がケガしていない側の2分の1以下に制限されている場合、10級11号が認定される可能性があります。

 関節の可動域がケガしていない側の4分の3以下に制限されている場合、12級7号が認定される可能性があります。

 可動域制限は、可動域角度に目が行きがちです。しかし、関節の可動域が制限されているだけでは後遺障害として認定されません。可動域制限の原因が交通事故による骨折などと医学的に関連していることが必要です。

股関節の痛み・しびれ:12級13号・14級9号

 股関節脱臼によって痛みやしびれなどが残った場合には、局部の神経症状として、後遺障害等級12級13号又は14級9号が認定される可能性があります。

 画像所見、神経学的検査をはじめとする客観的な医学的所見によって、残存する症状を他覚的に証明できる場合は、12級13号が認定される可能性があります。

 明確な他覚的所見による証明が難しい場合でも、事故態様、受傷内容、治療経過、症状の一貫性などから、症状の残存を医学的に説明できる場合には、14級9号が認定される可能性があります。

 痛みやしびれが残っているからといって、必ず後遺障害が認定されるわけではありません。痛みやしびれの原因を裏付ける医学的所見や、治療経過との整合性が重要です。

 坐骨神経損傷によって運動麻痺が残った場合には、麻痺の部位や程度に応じて、機能障害が問題になることもあります。

人工股関節・人工骨頭に置換した場合

 股関節脱臼による大腿骨頭壊死などが重症化し、人工股関節や人工骨頭への置換術が必要になる場合があります。

 人工骨頭または人工関節に置換した場合は、後遺障害等級10級11号が認定される可能性があります。

 置換後の股関節の主要運動がいずれも健側の可動域の2分の1以下に制限されている場合には、後遺障害等級8級7号が認定される可能性があります。

 人工骨頭や人工関節に置換した場合には、通常の可動域制限とは異なる認定基準がある点に注意が必要です。

 交通事故による股関節脱臼で、後遺障害の認定を受けるには、以下のようなポイントを押さえておくことが重要です。

画像検査で股関節の状態を確認する

 股関節脱臼では、X線、CT、MRIなどの画像検査によって、股関節の損傷や治療後の状態を確認しましょう。

 特に、骨折の合併や関節の変化、大腿骨頭壊死などの有無は、後遺症の原因を判断するための重要な情報です。

 症状が残っている場合には、必要に応じて画像検査などによる評価を受けることが重要です。

股関節の可動域を正確に測定する

 関節の可動域制限では、可動域角度を正確に測定することが重要です。角度計を用いて正確に測定してもらうようにしましょう。

 股関節の主要運動は、以下の2つです。

  • 屈曲・伸展
  • 外転・内転

痛み・しびれなどの症状を正確に伝える

 股関節脱臼による痛みやしびれは、局部の神経症状として後遺障害が認定される可能性があります。後遺障害等級14級9号は、治療経過や症状の推移が重要になります。したがって、症状の内容を主治医に、正確に継続して伝えることが重要です。

 症状を伝える際は、痛みやしびれによって、日常生活や仕事にどのような支障があるかも併せて伝えておくといいでしょう。

大腿骨頭壊死などの遅発性の合併症に注意

 股関節脱臼では、整復直後に大きな問題がなくても、後になって大腿骨頭壊死などが明らかになる場合があります。

 したがって、股関節の痛みが続く場合や、新たな症状が現れた場合には、医師に相談することが重要です。

 また、後遺障害の認定を検討する際にも、股関節の状態や今後の治療の必要性などを医師に確認しておくことが大切です。

 交通事故による股関節脱臼では、脱臼を整復しても、股関節の痛みや可動域制限、足のしびれなどが残ることがあります。

 また、大腿骨頭壊死や変形性股関節症など、時間が経過してから生じる合併症にも注意が必要です。

 股関節脱臼によって後遺症が残った場合には、可動域制限の程度に応じて8級7号・10級11号・12級7号、痛みやしびれなどの神経症状について12級13号・14級9号が認定される可能性があります。

 後遺障害等級の認定では、画像検査や可動域の測定結果、症状の経過などが重要になります。

 股関節脱臼による後遺症が残っている場合には、適切な後遺障害等級の認定を受けるためにも、医学的な資料を確認し、症状に応じた対応を検討することが重要です。

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