友人や知人が運転する車に同乗中に事故に遭った場合、運転者に損害賠償する際に過失相殺されることはありますか?
好意同乗とは?
好意同乗とは、運転者Aが好意で、他人Bを自車に同乗させることをいいます。交通事故で被害を受けたBが、Aに対して損害賠償請求を行った場合に、賠償額を減額すべきか?が議論されてきました。
好意同乗の問題は、①過失相殺の問題であるとともに、②自賠法3条の他人性の問題でもあります。今回は、その内の①過失相殺の問題について取上げます。
好意同乗の類型
好意同乗の際に同乗者の損害賠償額を減額すべきか?は、好意同乗の類型ごとに考えられています。
①単なる便乗・同乗型
この場合は、同乗者の損害賠償額を減額することはありません。
②危険承知型
運転者が飲酒運転としているのを知りながら、あえて同乗したというような事故発生の危険性が高い客観的事情を同乗者が知っていたにもかかわらず同乗した類型です。この場合は、過失相殺の規定又は過失相殺の規定の類推適用により、同乗者の損害賠償額を減額します。
裁判例で減額が認められた例としては、飲酒運転のほかに、①運転者の過労・睡眠不足、②運転者が無免許又は未熟な運転技術、③運転者の反規範的な運転態度などがあります。
③危険関与、増幅型
同乗者がスピード違反をあおる等、事故発生の危険が増大するような状況を現出された類型です。この場合も②と同様に過失相殺の規定又は過失相殺の規定の類推適用により、同乗者の損害賠償額を減額します。
裁判例で減額が認められた例としては、①定員外乗車、②窓枠から上半身を乗り出して同乗する箱乗りなどがあります。
減額の程度
同乗者の損害賠償額の減額が認められた裁判例では、減額の程度はおおむね10%~25%程度の減額が認められています。
危険事情を認識しながら危険性を助長するような態度をとった場合、高度の危険事情を認識しながら同乗した場合、ヘルメットやシートベルトの付着用といった同乗者の固有の落ち度が競合する場合は、減額の程度が大きい傾向にあります。