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健康保険の損益相殺と過失相殺の先後(交通事故の損害賠償)


健康保険の給付の損益相殺と過失相殺の先後関係を取上げます。

損益相殺と過失相殺の先後

 損害賠償から損益相殺と過失相殺の両方を行う場合、どちらを先に行うのか?という問題があります。交通事故の被害者からすると、先に損益相殺を行う方が有利になります。

健康保険の損益相殺と過失相殺

 健康保険の給付の損益相殺と過失相殺の先後は、先に、健康保険の給付の損益相殺を行うというのが、これまでの実務の大勢でした。

 しかし、平成17年の最高裁判決以後、見解が分かれています。もっとも、平成17年の最高裁判決は、自賠法の解釈に限って、健康保険の給付の損益相殺と過失相殺の先後について判断したもので、健康保険の給付の損益相殺と過失相殺の先後関係一般について判断したものではないと解されています。

最高裁平成17年6月2日判決

 政府保証事業との関係で、健康保険の給付の損益相殺と過失相殺の先後が問題になった事案です。

事案の概要

 被上告人ら3名の父であるAは、信号機により交通整理の行われている交差点において、自転車を運転して自転車横断帯上を横断中、Bの運転する普通乗用自動車に衝突されて死亡した。

 Bには、交通閑散であった上、対面する信号機の信号が青色を表示していることに気を許して前方注視を怠り、制限速度時速60㎞のところを時速90㎞以上で本件自動車を走行させて交差点に進入した過失があり、他方、Aには、対面する信号機の信号が赤色を表示しているのに、これを無視して上記交差点を横断した過失がある。上記に加え、本件事故が夜間に発生したものであること、Aが本件事故当時75歳の高齢であったことなどに照らすと、Aの過失割合は5割である。

 Bの運転する自動車には自賠責保険が付保されておらず、被上告人らは、政府保証事業へ請求を行った。また、被上告人の一人は、Aの葬儀費用を支出し、国民健康保険法58条1項の規定により、葬祭費として5万円の支給を受けた。

最高裁の判断

 最高裁は、過失相殺を先に行うべきだと判断しています。

 自賠法72条1項後段の規定により政府が被害者に対しててん補することとされる損害は、自賠法3条により自己のために自動車を運行の用に供する者が賠償すべき責めに任ずることとされる損害をいうのであるから、自賠法72条1項後段の規定による損害のてん補額は、被害者の過失をしんしゃくすべきときは、被害者に生じた現実の損害の額から過失割合による減額をした残額をいうものと解される。

 そして、自賠法73条1項は、被害者が、健康保険法、労働者災害補償保険法その他政令で定める法令に基づいて法72条1項の規定による損害のてん補に相当する給付を受けるべき場合には、政府は、その給付に相当する金額の限度において、上記損害のてん補をしないと規定し、自動車損害賠償保障法施行令21条14号は、自賠法73条1項に規定する政令で定める法令の一つとして国民健康保険法を挙げているから、同法58条1項の規定による葬祭費の支給は、自賠法73条1項に規定する損害のてん補に相当する給付に該当する。

 したがって、自賠法72条1項後段の規定による損害のてん補額の算定に当たり、被害者の過失をしんしゃくすべき場合であって、上記葬祭費の支給額を控除すべきときは、被害者に生じた現実の損害の額から過失割合による減額をし、その残額からこれを控除する方法によるのが相当である。


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