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低髄液圧症候群の後遺障害(交通事故の後遺障害)


交通事故による低髄液圧症候群の後遺障害を取り上げます。

低髄液圧症候群

 低髄液圧症候群は、脳脊髄液の漏出によって起立性の頭痛・後頚部痛・めまい等を引き起こす疾患です。

 日本では、難治性の外傷性頚部症候群の中に、低髄液圧症候群の患者が含まれていることが報告されました。

 症例の多くで脳脊髄圧が正常なので、脳脊髄液減少症という病名が用いられ、脳脊髄液減少症ガイドラインが発表されたことで、この病名が広まりました。

 しかし、その後の研究で、脳脊髄液が減少するという病態は推論にすぎず、現時点で低髄液圧や脳脊髄液漏出を診断できるにすぎないとされています。

脳脊髄液減少症の原因

 脳脊髄液減少症は、脊髄で脳脊髄液漏出が原因とされています。脳脊髄液の漏出が続くと、髄液量が減少し、脳にかかる浮力が低下して、脳が尾側へ偏位します。その結果、脳の痛覚感受性器官が牽引されることで規律性頭痛が出現し、脳神経症状が生じるとされています。

脳脊髄液減少症の症状

 国際頭痛分類では、特発性低頭蓋内圧性頭痛は、特発的な原因による低髄液圧で引き起こされる起立性頭痛、通常、項部強直や自覚的な聴覚症状を伴うとされています。

 脳脊髄液減少症ガイドラインでは、主な症状として、頭痛、頚部痛、めまい、耳鳴り、視野機能障害、倦怠・易疲労感が挙げられています。これらの症状は、坐位、起立位により3時間以内に悪化することが多いとされています。

脳脊髄液減少症の診断・検査

 脳脊髄液減少症の診断には、頭部CT・頭部MRI・脊髄MRI・CTミエログラフィ・脳槽シンチグラフィが用いられます。

脳脊髄液減少症の治療

 発症6か月以内では、2週間程度の臥床安静と1日2リットル程度の水分摂取又は輸液で、症状改善が見られることが多いとされています。

硬膜外自家血注入療法

 上記の保存的治療で症状が改善されない場合、硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)が用いられます。

脳脊髄液減少症の後遺障害

 むち打ちとして、後遺障害が認められる場合、局部の神経症状として、後遺障害等級は、14級又は12級になります。

 脳脊髄液減少症は、脳・脊髄にわたる中枢神経の障害として9級以上の後遺障害等級が認められる余地があります。

 低髄液圧症候群の発症に関しては、問題が顕在化した後、否定する裁判例が続いていました。そんな中、福岡地裁行橋支部平成17年2月22日判決が低髄液圧症候群の発症を認め、注目を集めました。しかし、その後は、発症を否定する又は発症と交通事故との因果関係を否定する裁判例が続いています。


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