交通事故による上腕骨近位端骨折の後遺障害を取上げます。
上腕骨近位端骨折
高齢者に多い骨折です。転倒の際に過外転を強制されたり、側方からの直達外力によって生じることが多い骨折です。
Neer分類
最も一般的に用いられている分類法がNeer分類です。骨片の1センチメートル以上の解離、45度以上の回旋を転位と定義します。
その上で、転位した骨片の数と骨折部位よって分類します。骨折脱臼についても分類しています。
骨片の数は、①2-part(二分節骨折)、②3-part(三分節骨折)、③4-part(四分節骨折)に分類します。
骨折部位は、①骨頭、②大結節、③小結節、④骨幹部に分類します。
2-part、3-part
1つ又は2つの骨片が転位している状態です。
4-part
3つの骨片が転位している状態です。骨頭への血流困難なため、整復は困難な状態です。
上腕骨近位端骨折の治療
転位がない場合又は転位が小さい場合は保存療法の対象です。整復位が保たれている場合は外固定も不要で、上肢下垂位を4~8週間保つと骨癒合が得られます。
転位が強い場合、入院治療による上肢外転方向への牽引が必要で、2~3か月で骨癒合が得られます。
3-part、4-partでは保存療法で骨癒合が得られないため、観血的手術が選択されます。
骨折面の損傷の大きなもの、粉砕骨折(4-part)で内固定が困難なもの、解剖頸に軟部組織の付着がない場合、人口骨頭の適応になります。
上腕骨近位端骨折の後遺障害
後遺障害としては、肩関節の機能障害が想定されます。
人口骨頭置換術が行われている場合
人口骨頭置換術が行われた場合に想定される後遺障害等級
肩関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されている場合→関節の用廃として、8級6号
肩関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されていない場合→関節の機能に著しい障害として、10級10号
人口骨頭置換術が行われていない場合
人口骨頭置換術が行われていない場合に想定される後遺障害等級
肩関節の可動域が健側の2分の1以下に制限→関節の機能に著しい障害を残すとして、10級10号
肩関節の可動域が健側の4分の3以下に制限→関節の機能障害として、12級6号