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交通事故で腱板を損傷した場合の後遺障害-肩の痛み・変可動域制限は何級になる?-


 交通事故で腱板を損傷し、治療を続けても肩の痛み、しびれ、動かしにくさが残ることがあります。

 このような症状が残った場合、後遺障害として認定される可能性があります。腱板損傷では、痛みやしびれが残る「局部の神経症状」、肩関節の可動域制限が問題になることがあります。

 ただし、腱板損傷は画像所見の評価が難しく、腱板損傷と診断されていても、後遺障害が非該当と判断されることが多いケガです。

 この記事では、交通事故による腱板損傷で問題になりやすい後遺障害の種類、認定される可能性のある等級、注意すべきポイントを解説します。

 肩腱板は、前方から肩甲下筋腱・棘上筋・棘下筋・小円筋の4つの腱から構成されています。これらの腱が一体化して、上腕骨頭をおおっています。

 肩関節の運動時、つまり、肩の外転・外旋・内旋を行う際に三角筋・大胸筋などの表層にあるアウターマッスルが、それぞれの動作の主作動筋になります。腱板は、上腕骨頭と肩甲骨関節窩の安定性を保つインナーマッスルとして作用します。

 腱板損傷の原因は、大きく2つに分けられます。1つ目は交通事故などの外傷です。転落や落下などの1回の大きな外傷の場合と小さな外傷が繰り返される場合があります。2つ目は、加齢による変性です。生体力学的に変性した腱板の強度は低下し、変性が進行するため、腱板の断裂に至ります。

 腱板損傷・断裂が生じた場合、自然治癒することはありません。経過とともに、断裂部は拡大し、筋萎縮も進行します。

 自覚症状としては、安静時痛・夜間痛・運動時痛・筋力低下が見られます。

腱板損傷の診断

 診断では、肩の自動側方挙上が60度以上不能な場合、棘上筋腱の断裂が疑われます。

 診断の際に、Drop Arm Testが行われます。90度外転が可能であれば棘上筋腱は正常または部分断裂と診断されます。90度外転位を保持し、患側上肢を下へ押下げたときに痛みのため上肢を90度外転位に保持できない場合、陽性とされます。

 X線では特有の所見はありませんが、肩峰骨頭間の距離が5ミリメートル以下の場合、肩峰下面の骨棘、上腕骨頭の棘上筋腱付着部の不整像が見られる場合、棘上筋腱が断裂・劣化している可能性が高いです。

 確定診断は、MRI、関節造影によって行われます。超音波検査が行われることがあります。MRIでは、T2強調画像で、断裂部は高信号を示します。

腱板損傷の治療

 腱板損傷の治療は、まず保存的治療が行われます。安静、日常生活指導とともに、投薬・注射により炎症と疼痛の軽減を図ります。疼痛が軽減すると、リハビリを行います。

 症状が継続する場合、日常生活に支障が生じる場合は、手術適応となります。手術適応の場合、間接鏡下肩腱板断裂手術が行われています。

 腱板損傷の後遺障害としては、①肩関節の機能障害と②腱板損傷による疼痛(局部の神経症状)が考えられます。

肩が上がらない・動かしにくい場合

 肩関節の可動域が健側の2分の1以下に制限された場合、関節の著しい機能障害として10級10号が認定されます。健側の4分の3以下に制限された場合は、関節の機能障害として12級6号が認定されます。

  なお、可動域の制限があるだけでは、後遺障害として認定されません。可動域制限の原因となった器質的損傷が、画像によって明らかにされていることが必須です。

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以下の「関節の機能障害の後遺障害認定のポイント」も参照

関節の機能障害の後遺障害-可動域制限が残った場合の等級と認定のポイント-

交通事故で肩・肘・手首・股関節・膝・足首などの関節が動かしにくくなった場合、可動域制限の程度によって後遺障害等級が問題になります。ただし、角度だけで認定されるわけではなく、骨折・靱帯損傷・神経損傷などの器質的損傷との整合性が重要です。

 腱板損傷の場合は、交通事故直後にMRIを撮影しておくことが重要です。

痛み・しびれが残った場合

 疼痛が残った場合は、局部の神経症状として評価されます。画像所見がある場合は12級13号、画像所見がない場合は14級9号が想定されます。

腱板損傷の後遺障害は、以下のような理由で非該当と判断されることが多いです。

腱板損傷の後遺障害が非該当と判断される理由

①交通事故との因果関係が否定される

②MRI画像の所見が否定される

③MRIを撮影したのが交通事故直後ではない

交通事故との因果関係を否定される

 交通事故による腱板損傷は、バイク運動時に肩を強く打ったり、手をついて転倒するなど強い外力が加わった際に生じます。事故態様から肩に直接的な衝撃が加わっていないと判断されると、腱板損傷と交通事故との因果関係が否定されます。

 また、交通事故の衝撃が軽微であったり、MRI画像で腱板損傷が古い損傷だと判断され、交通事故との因果関係が否定されることもあります。

MRI画像の所見が否定される

 腱板損傷で後遺障害が認められるには、自覚症状だけではなく、MRI画像が必要になります。後遺障害等級12級以上は、MRI画像の所見が必須です。

 しかし、MRI画像の所見から腱板損傷が否定されることがあります。また、前記のとおり、交通事故より前から存在していた古い損傷だとして、交通事故との因果関係が否定されることもあります。

MRIを撮影したのが交通事故直後ではない

 交通事故から数か月後に、初めて肩のMRIを撮影した場合は、腱板損傷と交通事故との因果関係が否定されてしまいます。

 交通事故直後に、肩のMRIを撮影しておく必要があります。

 腱板損傷では、肩関節の可動域制限が残る場合には、肩関節の機能障害として後遺障害が認定される可能性があります。また、可動域制限までは認められない場合でも、痛みが残っていれば、局部の神経症状として後遺障害の対象になることがあります。

 もっとも、後遺障害の認定では、症状が残っているというだけでなく、MRIなどの画像所見によって腱板損傷が確認できるかが重要になります。特に、腱板損傷は加齢による変性との区別が問題になることもあります。そのため、交通事故後できるだけ早い段階で、適切な検査を受けておくことが大切です。

 交通事故後、肩の痛みが続いている、腕が上がりにくい、夜間痛があるといった症状がある場合は、治療経過や画像所見を確認したうえで、後遺障害の申請を検討する必要があります。


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