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線維筋痛症と後遺障害


非定型的な後遺障害の一つである線維筋痛症を取上げます。

線維筋痛症(FM)

 線維筋痛症は、原因不明の全身性疼痛が主症状です。その他に、種々の程度の疲労・倦怠感・微熱・こわばり等の全身症状・不眠・うつ等の精神症状・過敏性腸症候群・過活動膀胱等の自律神経症状が見られるます。また、ドライアイやドライマウスといった症状が見られることもあります。

 外傷・手術・感染などの外因にストレス・うつ等の内因が加わり、神経・内分泌・免疫系の異常が生じて、特に下行性疼痛抑制系に異常をきたし、全身の疼痛、様々な身体・精神症状が出現すると考えられています。

 筋肉・関節など四肢を中心に全身に激しい疼痛が広がって、長期間続くため、日常生活が障害され、生活の質が著しく低下してしまいます。

FMのACR分類基準

 アメリカのリウマチ学会(ACR)が1990年に発表した分類基準が診断に用いられています。2010年に新たな予備診断基準が公表されていますが、広く用いられるには至っていないようです。

 ACRの分類基準は、次のとおりです。

ACRの基準

(1)広範囲にわたる疼痛が3か月以上持続する

 広範囲とは、右・左半身、上・下半身、体軸部のことをいいます。

(2)全身18か所の圧痛点のうち11か所以上に疼痛を認める

 圧痛点とは、後頭部、頸椎下方部、僧帽筋上縁部、棘上筋、第2肋骨、肘外側上顆、臀部、大転子部、膝関節部です。

線維筋痛症の治療

 薬物療法が中心になります。発症早期で日常生活動作障害が少ない時点では、プレガバリンが使われます。必要に応じて、ガバペンチンやSNRIを使用し、運動療法、カウンセリングによって症状の軽減を図ります。

 症状が悪化し疼痛によって、日常生活動作が困難になった場合は、さらに向精神薬などを用い、認知科学療法などを行います。

線維筋痛症の後遺障害

 線維筋痛症は、その原因がよくわかっておらず、他覚的所見のない疾患です。そのため、詐病を疑われることも少なくありません。したがって、そもそも、線維筋痛症であることから立証する必要があります。

 自賠責保険は、神経障害性疼痛は、12級、14級が後遺障害等級表に明示されています。また、認定される受傷部位の疼痛と区別される特殊な疼痛として7級、9級、12級が後遺障害等級表に明示されています。しかし、特殊な疼痛は、CRPSを想定していて、線維筋痛症を想定していません。

 線維筋痛症は、他覚的所見が認められないので、現在の自賠責保険の枠組みでは、12級の「局部に頑固な神経症状を残すもの」が認められる余地はないと考えられます。

 そもそも、自賠責保険の後遺障害は器質性障害を前提にしていて、非器質性障害は後遺障害として評価されにくくなっています(非器質性精神障害の後遺障害参照)。

線維筋痛症が問題となった裁判例

 下級審の裁判例で線維筋痛症による後遺障害について判断したものを複数紹介します。後遺障害の有無はもちろん、そもそも交通事故と線維筋痛症との因果関係が問題になっています。

京都地裁平成22年12月2日判決

 交通事故と線維筋痛症の因果関係を認め、後遺障害等級7級に相当すると判断しています。

横浜地裁平成24年2月28日判決

 線維筋痛症であること自体は否定しました。しかし、線維筋痛症の不全型又は軽症の状態である慢性広範囲痛症であると診断されていたことから、交通事故と慢性広範囲痛症との因果関係を認め、後遺障害等級7級に該当すると判断しています。

東京地裁平成24年9月13日判決

 被害者は、線維筋痛症とともに、低髄液圧症候群による後遺障害もあると主張していました。裁判所は、どちらも否定しています。なお、自賠責保険は、頸椎捻挫により後遺障害12級と認定しており、裁判所も自賠責保険の判断は肯定しています。


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