交通事故による肩甲骨骨折の後遺障害を取上げます。
肩甲骨骨折
肩甲骨骨折のうち、肩甲体部の骨折は横骨折,斜骨折の場合が多く、ほとんどの場合は保存療法で治療ができます。
肩甲骨関節窩骨折は、肩甲上腕関節の安定性が治療上の問題になります。肩甲骨関節窩骨折は、肩側方からの直達外力や上腕骨の頭側長軸方向への介達外力によって生じます。
肩甲骨周囲に強い直達外力が加わると、鎖骨骨折、肋骨骨折などが合併することがあります。
Ideberg分類
肩甲骨関節窩骨折の分類として、Ideberg分類があります。TypeⅠ~TypeⅤに分類します。
TypeⅠ
前下方関節窩の剥離骨折
TypeⅡ
下方半分が自由骨片となった横断骨折
TypeⅢ
烏口突起を含む上方3分の1部での骨折
TypeⅣ
関節窩~肩甲骨体部の貫通骨折
TypeⅤ
TypeⅡとTypeⅣの混合
肩甲骨骨折の診断
肩甲骨関節窩骨折の診断は、通常の肩甲骨の2方向のみでは、骨折の部位、大きさを三次元的に把握することが不十分なことが多く、正確な評価は3Dを含むCT検査で行います。
肩甲骨骨折の治療
肩甲体部骨折のほとんどは保存療法が選択されます。三角布で上腕骨を固定する程度で特別な外固定も必要がない場合がほとんどです。
肩甲骨関節窩骨折のTypeⅠ・Ⅱ・Ⅴは、骨折形態から骨頭の不安定が生じることがあります。転位の大きいものは手術適応となります。
肩甲骨骨折の後遺障害
肩甲骨骨折の後遺障害としては、変形障害と機能障害が考えられます。
変形障害
肩甲骨に変形治癒を残し、外見上、明らかな場合は12級5号が想定されます。
機能障害
肩関節に機能障害を残すことがあります。
肩甲骨骨折により想定される機能障害の後遺障害等級
可動域角度が健側の2分の1以下に制限されている場合:10級10号が想定されます。
可動域角度が健側の4分の3以下に制限されている場合:12級6号が想定されます。