交通事故では様々な保険を使うことができます。それらの保険を使った場合、保険代位という問題が生じます。
交通事故では被害者の保険がいろいろ使える
交通事故の被害に遭った場合、被害者が加入している保険が使えることがあります。代表的なのは、人身傷害保険・無保険車傷害保険・搭乗者保険・自損事故保険・傷害保険・生命保険などです。
保険代位されるものは控除する
加害者からの賠償金とは別に受取った各種保険金を加害者への損害賠償金から控除するのか?が問題となります。保険金については、保険代位されるものについては、保険代位の効果として、結果的に、損賠請求金から控除することになります。
保険代位とは
交通事故により、被害者には、加害者への損害賠償請求権が発生します。保険会社がその事故について、被保険者である被害者に保険給付を行った場合、保険会社は、被害者が加害者に対して有する損害賠償請求権について、当然に被害者に代位します(保険法25条)。要するに、保険金の支払いを受けた被害者の損害賠償請求権が保険会社に移転するわけです。
これを保険代位といいます。請求権が代位しているので、この場合を特に、請求権代位といいます。支払われた保険金が損害賠償金の一部である場合、どの範囲で請求権が代位するのか?が議論・争われてきました。
差額説の採用
絶対説、比例説、差額説が対立していました。保険法は、差額説を採用することで決着をみましたが、各学説でどのような違いが生じるのかを簡単に触れておきます。
①絶対説
保険会社は50万円全額について代位します。加害者は、被害者に20万円(70万円-50万円)を支払えばいいので、被害者の取得金額は、合計で70万円になります。
②比例説
保険会社は、70万円の2分の1(保険金額/保険価額)の35万円について代位します。加害者は、被害者に35万円(70万円-35万円)を支払えばいいので、被害者の取得額は、合計85万円になります。
③差額説
被保険者である被害者の権利が優先されます。被害者は、50万円を加害者に請求できます(100万円-50万円)。保険会社は、20万円(70万円-20万円)について代位します。被害者の取得額は合計すると100万円になります。
人身傷害保険の代位の範囲に、つづく
請求権代位については、人身傷害保険の代位の範囲について、最高裁判決が出され、実務上も注目されています。人身傷害保険の代位の範囲については、後日、紹介します(人身傷害保険の代位の範囲)。